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エリクソン催眠とは?ー無意識を味方にする現代的な催眠療法
エリクソン催眠(Ericksonian Hypnosis)は、アメリカの精神科医・心理学者
ミルトン・H・エリクソン(1901–1980)の研究をもとに発展した催眠療法です。
従来の命令型催眠とは異なり、柔らかく間接的で、
クライアント一人ひとりの個性や状況に合わせたオーダーメイドのアプローチ
を取ります。
ミルトン・エリクソン ― 現代催眠の父
幼少期にポリオによる重度の麻痺を経験したエリクソンは、人間の心理や無意識の働きへの鋭い洞察を育みました。
彼は無意識を「問題の溜まり場」ではなく「創造性と解決策の源泉」と捉え、それを引き出す催眠法を確立しました。
エリクソン催眠の4つの特徴
1. 無意識を味方にする
催眠状態は眠りではなく、深く集中しリラックスした意識状態です。
クライアントは自らの内なる資源(知恵・記憶・創造性)にアクセスし、望ましい変化を促します。
2. 間接的・許可的な言葉
物語や比喩、あえて曖昧な表現を用い、クライアントの無意識が
自分にとって最適な意味を見つける
ことを可能にします。
3. 創造的な解離
悩みや習慣的な思考パターンから一時的に距離を置くことで、新たな選択肢や行動が生まれます。
4. 混乱の技法
ユーモアや逆説で軽く認知を揺らし、未活用の内的資源を呼び覚まします。
期待できる効果と適応例
エリクソン催眠は以下のような分野で活用されています。
- 不安やストレスの緩和
- 恐怖症やパニック障害の克服
- 依存症(喫煙、過食など)
- 慢性痛や心身症状の緩和
- 自己肯定感・自信の回復
- 感情の解放、燃え尽き症候群からの回復
- 人生の転機や変化への適応
- アスリート・アーティスト・ビジネスでのパフォーマンス向上
古典催眠との違い
古典催眠が直接的な暗示(「〜しなさい」)を使うのに対し、エリクソン催眠は協働型のプロセスです。
セラピストは指示を出すのではなく、
クライアントの中から答えを引き出すガイド
として関わります。
そのため変化が自然で深く定着し、自己効力感が育まれます。
他の療法への影響
エリクソン催眠は、以下の心理療法にも大きな影響を与えました。
- NLP(神経言語プログラミング)
- システミック(家族)療法
- 戦略的療法・短期療法
近年では、EMDR、ソフロロジー、ボディワークなどとも統合され、発展を続けています。
エリクソン催眠が選ばれる理由
- 個人のペースと尊厳を尊重
- 侵襲的でない優しい手法
- 想像力と象徴的言語の活用
- 子どもから大人まで対応可能
- 短期間での成果が期待できる
まとめ ― 自由と再統合への扉
エリクソン催眠は、人間の自然な自己治癒力への信頼を基盤としています。
安全で柔軟なセラピー空間の中で、自分自身とのつながりを取り戻し、内面の自由とバランスを回復することを目指します。